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顧客のライフスタイルや価値観の変化を見据え、ライフサイクルの各段階に応じて、年金、医療や介護の分野を含め、きめ細かくそのニーズに対応した商品の提供を行っていくことが求められている。
その際、中小会社にとっては、比較優位部門と顧客層の見極めが重要であり、体力のある大手会社では金融ビッグパンをにらんで、損害保険商品はもとより後述の介護・福祉サービスから証券(投信)や決済性預金を総合化したより幅広な生活保障の提供が指向されるべきであろう。 その意味では、生命保険会社にとっては、商品開発もさることながら、市場の適切な細分化(年齢、性別、ライフ・スタイル等)などのマーケティグ戦略の展開や、多様化した商品・サービスを顧客のニーズに応じて組み合わせて提供できる高度の知識を持ち、顧客の生活保障のコンサルタントたりうる営業職員の育成、ならびにそれを可能にする先進的情報通信技術の活用が大きな意味を持つといえよう。
今日、急速に進む高齢化は、生命保険業の存在意義を生活(リスク)保障の領域から、これまで本業の生命保険業を通じて蓄積してきた医学とりわけ成人病に関する知識や人材などの経営資源を活用した介護・福祉サービスないしはシルバーサービスへと拡大しつつある。 わが国では、前述のように、寝たきりや痴呆による要介護者の急増が予想されており、家族の変容もあって、施設であれ在宅であれ、家族内の介護が外部化され、公、民の別を間わず介護サービスへのニーズが増加することは必歪である。
しかし、介護サービスのインフラは極めて貧弱で、早急に企業を含めたサービス体制を拡充しなければ公的介護保険が導入されても「介護保険料を支払ったのにサービスを受けられない」という事態が多発することが予想される。 そのため政府は規制緩和、行財政改革の一環としても、在宅介護を進めるための民間参入の促進を図りつつある。
在宅介護サービス(ホームヘルプ・サービス)、在宅入浴サービス、給食・食事宅配サービス、移送サービスなどの在宅サービス、ショートステイ・サービス(寝たきり老人などを短期間、施設で預かる)、デイサービス(老人を施設に送迎して日帰りで介護する)、福祉機器・介護用品サービス(レンタル・版売)からマンパワー育成(介護福祉士の育成など)といった介護関連分野が拡大し、営利企業、非営利団体からボランティアまで幅広い層の役割発揮が期待されるようになっている。 生命保険業界は、前述のように、85年から寝たきり・痴呆状態になったときに給付金(一時金または年金)を支払う介護保障保険を販売してきた(もっとも、需要が顕在しにくかったこともあり、契約件数は96年度末で190万件ほどで比較的少ない)。
また、(定期付き)終身保険の保険料払込み終了時に介護保障へ移行することのできる特約の開発も行ってきた。 事業の性格から多数の医師を擁し、介護保障保険や疾病保険の支払い査定および関連事業の一環として展開してきた財団・医療法人(病院)を通じて、成人病・寝たきり・痴呆などに関する医的研究を蓄積し、また有料老人ホームなどの福祉関連事業(シルバー・サービス事業)を展開し、各種の情報・ノウハウを蓄積してきた。
さらに、契約者サービスの一環として、自社カードなどと結び付けて電話、アンサー、インターネットなどのネットワークによる健康相談、介護相談や業者の紹介なども行ってきた。 医療費用保険や介護費用保険を販売してきた損害保険業界とともに、介護・福祉事業に最も近いところにある業種の一つといってよいであろう。

すでに、生命保険会社や損害保険会社のなかには、介護サービスを提供する関連会社を設立したり、設立計画を公表しているところがあるそのための社内組織を整えているところもあり、関連会社や別の業者との提携により、年中無休の訪問看護事業、ショートステイやデイサービス、緊急時のセキュリティ事業、食事の宅配サービス、介護保険とのからみでの介護認定やケアフランの作成などの事業化調査を進めている会社もある。 今後は、介護・福祉サービスと保険(介護保険のみならず、従来一部生命保険会社が取り組んでいる老人マンションと終身年金との組み合わせなど)とを組み合わせた総合的な介護・福祉関連サービスを提供していくことが求められる。
とりわけ、公的介護保険が実現したときには、その補完として、契約者が現金だけでなくサービスの給付も受けられる現物給付型の介護保険の開発に取り組むべきであろう。 また、土地や建物を担保に老後の介護・生活資金を融資する「リバース・モーゲージ(住宅(土地)担保年金)」への取り組みも必要である。
住宅(土地)担保年金は、金利リスク、担保不動産の価格変動のリスク、借り手の長生きのリスクという各リスクを測定し、適切なオプション・プレミアムを設定する仕組みとして捉えられる。 アメリカでは盛んに行われているが、わが国では一部の自治体や信託銀行などが開発しているもののあまり普及していない。
わが国で普及していない理由は、相続人との問題、税制上の課題などもあるが、基本的にはリスクの測定と引受技術が未発達なことによると考えられる。 生命保険会社は、生存リスクや運用リスク管理のプロであり、また不動産に関する知識・経験も有している。
これらのリスクを総合して自らあるいは専門家グループの一員として引き受ける手法の開発に取り組んでほしいものである。 なお、国の制度としても、財政の逼迫を考えれば、介護のリスク・ファイナンス面でも民間を活用すべきであって、そのための税制上の措置なども検討すべき課題である。
ただ、生命保険会社側も、介護サービスの提供主体になれビジネス・チャンスが広がるといった感覚ではなく、介護・福祉サービス分野へとその領域を拡大することによって、国民の生活保障を担う生活保障産業としての社会的使命をよりよく遂行できるとの意識を持って取り組むべきことはいうまでもない。 生命保険業が社会保障を補完する生活保障の提供を存在意義とすることは、その海外展開を否定するものではない。
むしろ、国内保険市場の成熟化に伴いアジアなどの海外の保険業務を積極的に進めることで、それらの国の居住者に対して保険保障を提供しつつ収益基盤の確立を図ることも、経営資源にゆとりのある会社にとってはグローバルな時代の必然の戦略である。 アメリカにおいても、近年、株式会社組織の生命保険会社に限らず、P、M、J、Nなどの大手生命保険相互会社が、シンガポール、マレーシア、タイなどに海外展開を図り、中国に駐在員事務所を設置する例も増えている。
これまで、生命保険業界の海外展開は、資産運用面が中心であり、海外での保険営業はK生命によるブラジルの保険会社の買収(69年)やM生命によるハワイの生命保険会社の買収(76年)などの若干の例外を除くと進出先日系企業の従業員福祉を目的としたものであった。 生命保険業界では、1970年代の初めから、現地保険会社との個別提携や国際団体保険協定に加盟することで、海外進出先の顧客企業の現地拠点に団体保険を提供することから始まって、84年には保険仲介現法をニューヨークなどに設立する例がみられた。

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